『週刊ダイヤモンド』12月21日号の第1特集は「銀行&信金・信組最新序列2025」。金利上昇時代に突入し、事業環境が好転している金融機関ですが、実はそれぞれの実力によって、勝ち負けが鮮明になっています。そこで独自の4指標を使って本業衰退度ランキングを作成し、最新序列を掲載しました。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

銀行103行・254信金&132信組
金利上昇時代に勝つ銀行・負ける銀行

 2024年3月のマイナス金利解除と、同年7月の利上げで、国内金利は上昇。四半世紀続いた低金利時代を抜け、金利のある世界が訪れた。

ダイヤモンド編集部では四つの指標で地銀の「本業力」を測定。衰退度で上記にランクインした銀行、あるいは勝ち組の銀行はどこか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 振り返ると、四半世紀続いた超低金利時代は、地方銀行にとって苦難の連続だった。

 景気後退とデフレ、人口減少など事業環境は年々悪化。さらに、20年9月に発足した菅義偉政権時代には、「地銀の数が多過ぎる」と名指しで批判され、1県1行に再編するよう圧力をかけられた。

 そして追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症のまん延による、経済の混乱に襲われた。20年以降、銀行はまさしく泣き面に蜂の状況だった。

 それだけに、マイナス金利解除と金利上昇時代の到来は、地銀にとって待ち焦がれた、これ以上ない福音だったに違いない。金利が上昇することで、貸出金利の引き上げが始まり、利ざやの改善や運用環境の好転が期待できる。銀行本来の金利差でもうける本業が復活するからだ。

 だが、全ての地銀が等しく金利上昇の恩恵を受け、業績向上が可能かというと、そう甘くはない。マイナス金利下では、金利差による商売ができなかったことで、単に地銀間の本業力が見えなくなっていただけだ。

 企業や個人への貸し出しといった本業利益の多寡は、銀行の提案力や交渉力、リスク管理能力によってはっきりと差が出るだろう。また有価証券の運用についても、巧拙によって運用損益に差が出る。そして、それら商売の元手である預金を集める力や、金利上昇によって膨らむ債券の評価損に対する自己資本耐久度も、これまで以上に重要となる。

 ダイヤモンド編集部ではこうした考えの下、「QUICK Finer Compass」から取得したデータを使い、四つの指標で地銀の「本業力」を測定。各指標を点数化し、100点満点の総合得点を低い順に並べることで「本業衰退度」ランキングを作成した。

 果たして衰退度で上記にランクインした銀行、あるいは勝ち組の銀行はどこか。次ページでその一端を公開する。

独自4指標で本業力を判定
3期半の業績で徹底分析!

 ランキングの作成で、特に重視したのは指標(1)の「本業利益率」だ。

 企業や個人への貸し出し、金融商品の販売や企業へのコンサルティングなどで得られる手数料を本業と捉え、海外金利が上昇を始めた22年3月期から、マイナス金利解除後の影響が出始めている25年3月期中間決算を加えた、3期半の業績を評価した。

 得点算出の対象としたのはメガバンクを含む大手銀行と地方銀行、第二地方銀行、埼玉りそな銀行、あおぞら銀行の合計103行で、財務データは「QUICK Finer Compass」から取得した。青森銀行とみちのく銀行は25年中間期で取得できる単体決算数値が不足しているため除外している。

負け組:5位高知、4位筑邦
勝ち組は伊予、千葉、横浜

 衰退度ランキングの上位に入った銀行、すなわち金利上昇の好機でもその波に乗れず、稼ぐことができていない銀行だ。

 4位は筑邦銀行(福岡県、総合得点14.6点)、5位は高知銀行(高知銀行、総合得点17.5点)だった。両行は本業利益率が22年3月期から24年3月期、さらに25年3月中間期まで全てマイナスに沈んだことが、衰退度上位にランクインする大きな要因となった。

 1位から3位の銀行名はぜひ本誌で確認してほしい。この3行は本業利益率の低迷に加え、運用総合利回りの低迷、預金増減率のマイナスなど、4指標全て厳しい結果が出ている。

 一方でランキング下位、すなわち金利上昇の波に乗り、勝ち組地銀として伸びている地銀は、伊予銀行(愛媛県、72.7点〈ランキング98位〉)、千葉銀行(千葉県、71.3点〈ランキング97位〉)、横浜銀行(千葉県、70.4点〈ランキング96位〉)となった。

 千葉銀行と横浜銀行は首都圏を地盤とし、規模や経営体力において他の地銀を引き離している。この順位は順当な結果となった。

 伊予銀行は愛媛県を地盤に、船舶金融(シップファイナンス)において日本有数の実績を持つ。船舶金融はリスク管理やマクロ経済、為替など、独特のノウハウが必要で難易度が高いといわれる。そこで培った力を発揮し、運用総合利回りなどで高い実績を残したことが、千葉銀行や横浜銀行などを凌駕する結果となった。

事業パートナーや預金預け先として
最適な金融機関はどこか?

 『週刊ダイヤモンド』12月21日号の第1特集は「銀行&信金・信組最新序列2025」です。

 メガバンクと大手銀行に地方銀行を加えた103行と、254の信用金庫、132の信用組合を、独自の指標を使って“本業力”を測定し、ランキングにしました。

 金利の上昇局面で、金融機関の勝ち・負けがはっきり出ます。財務諸表だけでは読み取れない実力を浮かび上がらせました。企業経営者にとっては事業パートナーとして付き合うべき銀行や信金・信組を選ぶ際の、また個人の方々にとっては、預金や資産運用などで利用する金融機関を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。